目の病気 目の病気の原因や症状、治療法などを解りやすく説明いたします。
網膜剥離
網膜に小さい孔ができ、この孔から眼球内の水分(液化した硝子体)が網膜の下へ入りこんで、網膜が剥がれる病気です。
網膜剥離の原因
網膜裂孔のできる原因はわかっていませんが、硝子体(しょうしたい)と網膜とに癒着があって、硝子体が収縮した時に、網膜を引き裂いて小さい孔(網膜裂孔、円孔)ができると考えられています。硝子体は年齢とともに収縮し、その時に網膜を引っ張ることが多いのです。
網膜剥離は、ただちに手術をする必要があります。手術までは剥離が進行するのを防ぐために、出来るだけ目を使わずに安静にしておきます。物を見る時の中心である、網膜の黄斑(おうはん)部に剥離が進行すると、視力が低下してしまいます。網膜が剥がれるということは、網膜が下の層から引き裂かれるということです。一度引き裂かれてから手術でくっつけても、元の視力には戻りません。黄斑部に剥離が進む前に手術をしないと、剥離が治っても良い視力は得られません。
網膜裂孔
硝子体は年齢とともに液化して収縮します。収縮する硝子体の後部が網膜から離れる時(後部硝子体剥離)、両者の癒着が強い場合、硝子体に網膜が引っ張られて裂孔が出来ます。
網膜剥離
眼球内の水分(液化した硝子体)が裂孔に流れ込むと、網膜が剥がれてしまいます(裂孔原性網膜剥離)。
網膜剥離の症状
網膜が剥がれた部分では物が見えなくなります。例えば、上方の網膜が剥がれると、下方が見えなくなります。また、物を見る時の中心である、網膜の黄斑部に剥離が進みますと、視力が極度に低下してしまいます。
網膜は薄い1枚の膜で、剥がれた網膜はゆらゆらと揺れながら浮いていますから、目を動かすたびに剥離が進行していき、見える範囲がだんだんと狭くなります。全網膜が剥離すると全く見えなくなります。
網膜剥離の手術
網膜剥離の手術原理は、裂孔の全周囲の網膜を眼球壁に癒着させて、網膜の下へ水が入りこむ隙間をなくすことです。剥離した網膜と眼球壁とを強くくっつけるために、網膜の下にたまっている水を抜いたり、眼球の外側にシリコンの樹脂を縫いつけて、これで眼球を凹ませて眼球壁を裂孔に押しつけたりします。また、裂孔が眼球の上方部にある場合には、眼球内に空気を注入します。空気は軽いので、立った姿勢の時には眼球内の上方部にたまって、裂孔を眼球壁に押しつけます。このようにして裂孔周囲が癒着するのに数日かかります。ですから、手術後しばらくは安静が必要です。
最近は硝子体手術と言って、眼内に直接手術器具を入れて網膜を元に戻し、裂孔周囲を癒着させて、ガスを入れて網膜を中から眼球壁に押しつける手技も多く用いられるようになりました。
黄斑円孔による網膜剥離
これは、物を見る時の中心である黄斑部網膜の真ん中に円形の孔(黄斑円孔)ができ、眼球内の水分(液化した硝子体)が、円孔から網膜の下に入りこんで網膜が剥がれる病気です。
この網膜剥離の場合には、手術時に眼球内にガスを注入して円孔を閉鎖し、網膜を元に戻すことが多く、手術後1週間ぐらいは顔を下向きにして寝ていただきます。
手術をして網膜剥離が治っても、物を見る時の中心である黄斑部網膜が欠損しているので、良い視力は得られません。
増殖性硝子体網膜症
これは、普通の裂孔原性網膜剥離がおこったあとに、網膜の表面や裏面に線維物質ができ、これが網膜を引っ張って非常に強い網膜剥離をおこす病気を言います。剥離した網膜の表面は、この線維物質によって引っ張られて、たくさんのシワができます。また、普通の網膜剥離の手術を行って、治るかに思える頃になって本症が発生し、強い網膜剥離になってしまうことがあります。これは非常に稀な経過です。
本症をおこすと硝子体手術と言って、眼球内に特殊なメスを入れ、生じた線維物質を網膜から剥がしながら、硝子体と線維物質の切除を行う手術をしなければなりません。しかし、線維物質が網膜に固くくっついていると、剥がす時に網膜が引き裂かれたり、網膜血管が破れて大出血をおこすことがあります。合併症の多い手術で、治るのは80%ぐらいと言われています。